カットマンに向いている人とは?粘り強さより大事な適性【卓球】

「カットマンに向いているのは、粘り強くて、ミスをしなくて、辛抱強い人」。そんなイメージを持っている人は多いと思います。もちろんそれも大事な資質です。ですが、今の卓球で勝っているカットマンを見ると、本当に向いているのは「攻撃もしたい、オールラウンドに戦いたい人」なのかもしれません。この記事では、高島規郎の考え方、中国の「勝つための要素」、そして有名選手の実例から、カットマンに向いている人の特徴を解説します。

この記事でわかること

  • よく言われる「カットマンに向いている人」のイメージ
  • 高島規郎・中国の理論・有名選手から見た、本当に向いている人
  • カットマンに向いている人の5つの特徴と、上達の順番
  • カットマンを始める前に知っておきたいこと
目次

よく言われる「カットマンに向いている人」

カットマンに向いている人として、よく挙げられるのは次のような特徴です。

  • 粘り強い
  • ミスが少ない
  • 辛抱強い
  • 冷静で、感情的にならない

どれもカットマンにとって大事な資質です。長いラリーを続け、相手のミスを待つ場面は、今のカットマンにもあります。ただ、これらは「カットマンに必要なことの半分」です。残りの半分が、攻撃です。

実は「攻撃もしたい、オールラウンドに戦いたい人」が向いている

高島規郎の「カットマンの三段論法」

「ミスター・カットマン」と呼ばれた高島規郎は、著書『卓球戦術ノート ラストページ』で、現代の卓球で勝てるカット型は「カット主戦型」ではないと書いています。カットで粘り続けるだけでは勝ち抜けず、攻撃を第一に考え、常に攻撃のチャンスをうかがうべきだ、という考え方です。

高島規郎は、カットマンの得点の取り方を「三段論法」として3つに整理しています。

  1. サービス・レシーブ・台上で、早い段階から攻撃して得点する
  2. カットから攻撃に移って得点する
  3. カットの変化で相手のミスを誘って得点する

3つのうち2つが攻撃です。頭の中は攻撃で占めておき、カットは意識しなくてもできるレベルにしておく。そして、あらゆる手を尽くしたときの最後の手段としてカットで粘る。高島規郎が描くカットマンは、攻撃の意識を強く持った選手です。

中国の「勝つための要素」にも「攻」が入っている

中国では、選手が勝つために必要な要素を漢字1文字ずつで表します。攻撃型は「転・快・准・狠・変」(回転・速さ・正確さ・強さ・変化)。そしてカットマンは「転・稳・低・攻・変」(回転・安定・低さ・攻撃・変化)です。

攻撃型の「速さ・強さ」の代わりに、カットマンには「安定・低さ」が入っています。それでも「攻」は、カットマンにも欠かせない要素として残っています。回転と安定のカットに攻撃を組み合わせる。それが中国の考えるカットマン像です。

事例|有名なカットマンは攻撃で点を取っている

実際に世界で活躍してきたカットマンも、攻撃を大きな武器にしています。

  • 朱世赫(韓国):攻撃と守備を5:5から4:6の割合で組み立てると紹介された、2003年の世界選手権準優勝のカットマン。「攻撃力も備えたオールラウンドなカットマンが現れれば世界1位になれる」とも話しています
  • 丁松(Ding Song)(中国):サービスからの3球目攻撃とパワードライブで、「守りと粘り」だったカットマンのイメージを変えた選手
  • 李天陽(Li Tianyang)(中国):攻撃の割合が6割を超える、今の中国を代表するカットマン
  • 村松雄斗(日本):代名詞は、ラケットを反転させて打つ強烈なバックハンドドライブ
  • 橋本帆乃香(日本):変化の大きいカットに、反転してのバックハンド攻撃を組み合わせるカットマン。2026年の世界選手権では、女子団体の決勝で中国の蒯曼(Kuai Man)に勝ちました
  • 徐孝元(韓国):強いサービスからの3球目攻撃と、隙があればすぐに打てるフォアドライブを持つ「攻撃型のカットマン」

佐藤瞳は2022年のインタビューで、ミスをしない粘り強さという自分の強みを残しながら、プレーを変えていきたいと話しています。粘りと安定だけでは、相手に慣れられたときに流れを取り戻すのが難しい。そう感じて攻撃を磨いてきました。

データもこれを裏付けています。中国の陳澤全(Chen Zequan)(2009年)の分析では、陳新華(Chen Xinhua)と丁松のサービスからの攻撃の得点率は79.3%と72.3%。攻撃型の馬琳(Ma Lin)(73.2%)と同じ水準でした。

カットマンに向いている人の5つの特徴

ここまでを踏まえて、カットマンに向いている人の特徴を5つにまとめます。

1. 攻撃も守備もしたい「欲張り」な人

守るだけ、攻めるだけでは物足りない。カットでしのぎ、変化で崩し、チャンスで打ち抜く。攻守のすべてを自分でやりたい人に、カットマンは合っています。

2. 回転や変化で相手を惑わすのが好きな人

切れたカットとナックルカットの出し分け、粒高や表ソフトの変化。相手の予想を外して得点するのが楽しい人は、カットマンの面白さを存分に味わえます。

3. 前後左右に動ける人

カットマンは台から前後左右に大きく動きます。韓国の研究では、守備型の選手は攻撃型より敏捷性が高く、全身持久力や敏捷性が高い選手ほど国内ランキングが上でした(김용연・김상훈、2013年)。

4. 相手を観察して作戦を考えるのが好きな人

朱世赫は、相手の心理を読まないと得点のルートが見えない、と話しています。相手の打ち方や癖を見て、どこで変化をつけ、どこで攻めるかを考える。頭を使う駆け引きが好きな人に向いています。

5. コツコツ練習を積める人

カットと攻撃の両方を身につけるには、練習量が必要です。高島規郎は、現代のカット型の戦い方を完成させるには攻撃型の約3倍の練習量が必要だとしています。佐藤瞳も、単純に考えてもカットと攻撃で2倍の練習が必要だと話しています。

カットマンの上達の順番

世界ランキング50位以内の日本の女子カットマン7人に聞き取りをした研究では、全員が同じ順番で力をつけていました。

  1. カットマンになったら、まず「カットとツッツキ」を身につける
  2. その後、攻撃を取り入れる
  3. 最後に、自分の課題と向き合って、自分らしいプレースタイルを作る

まずは守りの土台を作り、そこに攻撃を積み上げていく。オールラウンドなカットマンも、この順番で育っています。

カットマンを始める前に知っておきたいこと

用具はプレースタイルに合わせて選ぶ

カットマンの用具には決まったルールがありません。バックに粒高・表ソフト・裏ソフトのどれを貼るかで、プレーは大きく変わります。詳しくはカットマンとはの用具の節でまとめています。

促進ルール

カットマンの試合はラリーが長くなりやすく、1ゲームが10分を超えると促進ルールに切り替わります。促進ルールでは、レシーバーが13回返球すればレシーバーの得点になるので、サービス側から攻める力が必要になります。

教えられる指導者は多くない

カットマンが少ない理由の1つとして、カットマンを教えられる指導者が少ないことが挙げられています(野中由紀、2017年)。韓国のカットマンの愛好者の間でも、カットマン出身の指導者に習うことが勧められています。身近に指導者がいない場合は、トップ選手の技術解説の動画や本、このサイトの技術記事も活用してください。

カットマンに向いている人についてよくある質問

Q. 背が低くてもカットマンになれる?

なれます。韓国の金暻娥は、背が低かったことから指導者にカットマンを勧められ、アテネ五輪で銅メダルを獲得しました。一方の朱世赫は、背が高かったことがカットマンになるきっかけの1つでした。背の高さに関係なく、カットマンとして活躍している選手がいます。

Q. 子どものうちから始めるべき?

早く始めることにこだわる必要はありません。世界トップレベルの女子カットマンへの聞き取りでは、卓球を始めるのが少し遅くてもトップに届く可能性があることが語られています。小さいころはカットマンへの対策をしている相手が少ないので、勝ちやすいという面もあります。

Q. 攻撃型から転向できる?

できます。橋本帆乃香は、小学1年生のときに攻撃型からカットマンに転向しました。中国の梁戈亮(Liang Geliang)も、両ハンドの攻撃を練習した経験がカットと攻撃を組み合わせるスタイルにつながったとされています。

まとめ

  • よく言われる「粘り強い・ミスが少ない・辛抱強い」は、カットマンに必要なことの半分
  • 高島規郎の三段論法、中国の「転・稳・低・攻・変」、有名選手の実例のどれを見ても、今のカットマンには攻撃が欠かせない
  • 本当に向いているのは、攻撃も守備もしたい、オールラウンドに戦いたい人
  • 上達は「カットとツッツキ→攻撃→自分のスタイル」の順番
  • 背の高さや始めた年齢に関係なく、カットマンとして活躍している選手がいる

守って、崩して、攻める。そのすべてを楽しめる人こそ、カットマンに向いている人です。

この記事を書いた人

チョッピー(Choppy)
カットマン歴15年以上。中学で卓球を始め、高校でカットマンに転向し、大学で練習を重ね、社会人の今もカットマンを続けています。

カットマンに関する情報は限定的で、指導者や知り合いから教えてもらうことがほとんど。暗黙知になりがちなカットマンの情報を共有知に変え、カットマン界を盛り上げたい。カットマン人口を増やしたい。そんな思いでこのサイトを作りました。

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参考・出典

※この記事の情報は2026年9月28日時点のものです。

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