カットマンの戦術|試合の組み立て方と得点の取り方【卓球】

カットマンの試合は、ただ粘って相手のミスを待つだけではありません。サービスからの攻撃、カットの変化、カットからの反撃を組み合わせて、自分から得点を取りにいきます。この記事では、トップのカットマンの考え方と、試合を分析した研究をもとに、カットマンの試合の組み立て方と得点の取り方を解説します。

この記事でわかること

  • 今のカットマンの考え方:「カット主戦型」ではなく「カット型」
  • カットマンの得点の取り方「三段論法」
  • 研究で見る、カットマンの試合の4つの局面
  • 勝つための5つの要素と、試合での心構え
目次

今のカットマンは「攻撃が第一」

「ミスター・カットマン」と呼ばれた高島規郎は、現代の卓球で勝てるカット型は「カット主戦型」ではない、と書いています(『卓球戦術ノート ラストページ』)。カットは技術の柱であり、広い守備範囲や安定性、体力も必要です。それでも、カットで粘るだけでは勝ち抜けない。カットを主な武器にするのではなく、攻撃を第一に考え、常に攻撃のチャンスをうかがう。これが今のカットマンの戦い方の出発点です。

高島規郎は別の著書で、現代のカット型は「7割カット、7割攻撃」、つまりカットも攻撃もどちらも高いレベルでできることが求められる、とも書いています(『続・卓球戦術ノート』)。

得点の取り方|カットマンの三段論法

高島規郎は、カットマンの得点の取り方を「三段論法」として3つに整理しています。

段階得点の取り方
①サービス・レシーブ・台上で、早い段階から攻撃して得点する
②カットから攻撃に移って得点する
③カットの変化で、相手のミスを誘って得点する

この3つを目まぐるしく使い分けて、試合を進めます。頭の中は攻撃で占めておき、カットは意識しなくても自然にできるレベルにしておく。そして、あらゆる手を尽くしたときの最後の手段として、カットで粘ります。

研究で見る、カットマンの試合の4つの局面

中国の楊青(Yang Qing)・呂延愷(Lü Yankai)(2020年)は、カットマンの試合を次の4つの局面に分けて分析する方法を作りました。

  1. サービスからの攻撃(サービス側の1〜3球目)
  2. レシーブからの攻撃(レシーブ側の2〜4球目)
  3. 主導権の奪い合い(5〜11球目)
  4. 粘り合い(12球目以降)

攻撃型の選手の分析では「サービスからの攻撃」「レシーブからの攻撃」「5球目以降のラリー」の3つに分けるのが一般的ですが、カットマンはラリーが長くなるので、5球目以降をさらに2つに分けています。この研究によると、カットマンが最も多く得点していたのは3球目でした(男子17.9%、女子12.4%)。ラリーの最長は、女子で79球、男子で58球でした。

世界トップレベルの女子カットマンの試合を分析した日本の研究でも、1〜3球目で得点しやすく、4〜9球目は得点率が低い傾向がありました。10球目以降の長いラリーでも得点率が高かったのは、世界ランキングの上位3人でした(野中ほか、2017年)。

つまり、カットマンは「最初の3球で点を取り、取れなければ長いラリーで粘り勝つ」という形で戦っています。

データで見る、カットマンの得点

  • サービスからの攻撃:陳新華(Chen Xinhua)と丁松(Ding Song)のサービスからの攻撃の得点率は79.3%と72.3%で、攻撃型の馬琳(Ma Lin)(73.2%)と同じ水準でした(陳澤全(Chen Zequan)、2009年)
  • ラリーの中心はバックのカット:朱世赫のラリーでの得点の50.5%はバックのカットでした(同)
  • カットマンがいる試合はミスが少ない:守備型の選手がいる試合は、攻撃型同士の試合よりミスが起きる確率が6〜8%低い(玉置・吉田、2020年)

勝つための5つの要素|転・稳・低・攻・変

中国では、選手が勝つために必要な要素を漢字1文字ずつで表します。攻撃型の選手は「転・快・准・狠・変」、カットマンは「転・稳・低・攻・変」です。

要素意味試合での意識
転回転回転量と、切る・切らないの差で相手を崩す
稳安定ミスをしない、粘り強く返す
低低さ低い弾道で、相手に打ち込ませない
攻攻撃チャンスを逃さず攻める
変変化回転・コース・リズムを変える

攻撃型の「速さ・強さ」の代わりに「安定・低さ」が入りつつ、「攻」もしっかり残っています。

試合での心構え

得点は速攻で、失点は粘りで

高島規郎は、「得点するときは速攻、失点するときは粘り」を鉄則としています(『続・卓球戦術ノート』)。長いラリーで失点するのはかまいません。ですが、速攻で簡単に失点することだけは避けます。点の取られ方も、試合の流れを左右します。

前に出たら、攻めるか下がるかを判断する

台の近くでストップやツッツキを処理したとき、相手が打ってくるボールならすぐに下がって待ちます。自分が攻撃できるボールなら、前で攻めます。高島規郎は、前に寄せられるたびにすぐ後ろへ下がるだけのカットマンでは勝てない、としています。

相手の心理を読む

韓国の朱世赫は、相手の心理を読まないと得点のルートが見えない、と話しています。相手が今カットに慣れているのか、焦っているのかを見て、変化や攻撃のタイミングを決めます。

高いカットで相手の強打を誘う

高島規郎は、あえて高いカットで相手に強打させ、それを鋭いカットで切り返す心理戦も紹介しています。攻撃側に「せっかく崩したのに、また一からか」と思わせることで、相手の集中力を削ります。

カットマンの戦術についてよくある質問

Q. カットマンは粘るのが基本?

粘る力は必要ですが、今のカットマンは攻撃が第一です。まず3球目までで点を取りにいき、取れなければ粘ります。

まとめ

  • 今のカットマンは「カット型」。カットで粘るだけでなく、攻撃を第一に考える
  • 得点の取り方は三段論法(早い攻撃・カットからの攻撃・カットの変化)
  • カットマンの試合は4つの局面に分けられ、3球目の得点が最も多い
  • 勝つための要素は「転・稳・低・攻・変」
  • 得点は速攻で、失点は粘りで。前に出たら、攻めるか下がるかを判断する

最初の3球で攻め、取れなければ粘り勝つ。それが今のカットマンの戦い方です。

この記事を書いた人

チョッピー(Choppy)
カットマン歴15年以上。中学で卓球を始め、高校でカットマンに転向し、大学で練習を重ね、社会人の今もカットマンを続けています。

カットマンに関する情報は限定的で、指導者や知り合いから教えてもらうことがほとんど。暗黙知になりがちなカットマンの情報を共有知に変え、カットマン界を盛り上げたい。カットマン人口を増やしたい。そんな思いでこのサイトを作りました。

運営者チョッピーのプロフィールとサイトについて

参考・出典

※この記事の情報は2026年9月28日時点のものです。

コメント

コメントする

目次