結局、カットマンとは何なのか?特徴・選手をわかりやすく解説

「カットマン」というと、守備型・粘り強い選手、というイメージを持つ人が多いと思います。テレビや配信で見かけて、「あの下がって粘る選手は何なのだろう」と気になった方も多いのではないでしょうか。ですが、そのイメージは半分正しく、半分は今のカットマンと違います。この記事では、カットマンの意味をわかりやすく説明したうえで、そのイメージがなぜ実情とズレているのかを掘り下げ、選手・用具・技術・戦術・対策までまとめて解説します。

この記事でわかること

  • カットマンのよくある定義と、CHOPPERSが考える「本当の定義」
  • 選手ごとに違うプレースタイルと、その分かれ方
  • カットマンの歴史・用具・技術・戦術・対策
目次

カットマンのよくある定義

カットマンとは、下回転をかけて相手のボールを返す「カット」を軸に戦う選手のことです。「カット型」「カット主戦型」とも呼ばれ、英語では「chopper(チョッパー)」や「defensive player」と呼ばれます。

一般には「守備型」「粘り強い」という説明がよくされます。台から下がり、粘り強く返球を続けて相手のミスを待つ。そういうイメージです。間違いではありませんし、非プレイヤーの方が「カットマンとは何か」を知りたいだけなら、この説明で十分でしょう。

でも、それって本当でしょうか。少なくとも私は、この説明に違和感を覚えます。

カットマンの本当の定義

カットマンは、カットをプレーに取り入れる戦型であって、必ずしも守備ではありませんし、攻撃も必須の武器です。カットそのものも、「守るための技術」というより、「下回転で相手を崩し、攻撃につなげるための技術」だと捉えた方が実情に近いです。

これは私だけの感覚ではありません。「ミスター・カットマン」と呼ばれた高島規郎は、著書『卓球戦術ノート ラストページ』の中で、現代の卓球で勝てるカット型は「カット主戦型」ではない、とはっきり書いています。中国では、カットマンが勝つための要素を「転・稳・低・攻・変」(回転・安定・低さ・攻撃・変化)と表現し、「攻」を欠かせない要素として位置づけています。元日本代表でスティガスポーツジャパン所属の塩野真人選手も、技術解説動画の中で、カットを「下回転で攻撃する」という意識で打つ技術だと語っています。

カットも攻撃も自由自在に操る、プレーの幅の広さこそが「カットマン」の最大の特徴であり定義だと、CHOPPERSとしては考えています。

選手ごとに多種多様なプレースタイル

カットマンの幅の広さは、実際の選手を見るとよくわかります。大きく4つのタイプに分かれます。

  • カットでの粘りが得意な選手:佐藤瞳など。ミスをしない粘り強さそのものを武器にしながら、近年は攻撃を増やしてプレーの幅を広げています
  • カットからの反撃が得意な選手:朱世赫・橋本帆乃香・村松雄斗など。カットで粘りながらも、ラケットを反転させたバックハンド攻撃や強烈なフォアドライブで、カットから攻撃へ一気に転じます
  • オールラウンドな選手:英田理志など。カットマンには珍しくフォア・バック両面に裏ソフトを貼り、サービス後にツッツキ・カット・攻撃のどれを選んでくるか読ませないプレーが持ち味です
  • バックカットとフォア攻撃を組み合わせる選手:パナギオティス・ギオニスやルーウェン・フィルスなど。バックハンドではカットに徹し、フォアハンドはドライブ主体の攻撃に徹するという、役割を明確に分けるスタイルです

守りを軸にする選手もいれば、攻撃を軸にする選手もいる。カットマンという枠の中に、これだけ違うスタイルが共存しています。それぞれの選手の詳しい経歴・技術・戦績は、選手のページ(女子のカットマン・男子のカットマン)でまとめています。

カットマンの歴史

カットマンは、20世紀の初めにヨーロッパで生まれた戦型です。1926〜1951年の世界チャンピオンのおよそ半分がカットマンでした。まさに、カットマンの時代があったのです。その後、スポンジラバーやループドライブの登場で攻撃型が主流になる中で、中国は粒高や「転不転(切れた下回転・ナックル)」のカットを、韓国は攻撃力の高いカットを生み出してきました。今は日本の女子のカットマンが世界のトップで戦っています。

地域ごとの代表的なカットマン

  • 日本:高島規郎・松下浩二・村松雄斗・佐藤瞳・橋本帆乃香
  • 中国:張燮林(Zhang Xielin)・梁戈亮(Liang Geliang)・丁松(Ding Song)・李天陽(Li Tianyang)
  • 韓国:朱世赫・金暻娥・徐孝元
  • ヨーロッパ:バーグマン・ハン・イン・フィルス

国・地域ごとの流れは、中国・日本・韓国・ヨーロッパのカットマンの系譜、そして世界のカットマンの歴史でまとめています。

データで見るカットマンの強さ

  • 攻撃型対カットマンは21勝21敗:2022〜2023年のWTTコンテンダーで攻撃型とカットマンが対戦した男子の42試合を分析した研究(Nikolakakisほか、2025年)
  • カットマンがいる試合はミスが少ない:守備型の選手がいる試合は、攻撃型同士の試合よりミスが起きる確率が6〜8%低い(玉置・吉田、2020年)
  • 世界の上位に増えたカットマン:女子の世界ランキング50位以内のカットマンは、1994年の2人から2017年には10人に増えた(野中由紀、2017年)

カットマンの戦術

「選手ごとに多種多様なプレースタイル」で見た通り、カットマンの得点パターンは選手によって大きく違います。カットからの反撃で得点する選手もいれば、粘りで相手のミスを誘う選手もいる。同じ「カットマン」でも、勝ち方の組み立てはまったく別物です。選手ごとの得点パターンの違いは、戦術のページで詳しく比較しています。

カットマンの主な技術

カットマンが身につける技術は、カットだけではありません。

サービス

高島規郎は、サービスを持ったら必ず3球目攻撃をすることを勧めています。男子のトップレベルの試合の分析では、カットマンのサービスはバックハンドサーブが58.4%、短いサービスがおよそ半分でした(Nikolakakisほか、2025年)。

レシーブ

同じ分析では、カットマンのレシーブはバックのカットが72.5%でした。高島規郎は、甘いサービスは攻撃で返し、カットで返したときも4球目で攻撃を狙うことを勧めています。

3球目・4球目攻撃

サービスからの3球目、レシーブからの4球目で先に攻撃を仕掛けるのが、今のカットマンの基本です。攻撃型の選手が最も嫌がるのも、この早い段階での攻撃です。

ツッツキ

台の近くで、短い下回転のボールを下回転で返す技術です。日本のトップの女子カットマン7人は、全員がカットマンになった後にまず「カットとツッツキ」を身につけ、その後に攻撃を取り入れていったという研究があります。

カット(フォアカット・バックカット)

相手のドライブに対して、ボールの下をこすって下回転をかけて返す技術です。よく切れたカットと、ほとんど回転のないナックルカットを同じフォームで出し分けることで、相手のミスを誘います。

フットワーク

カットマンは前後左右に大きく動きます。韓国の研究では、守備型の選手は攻撃型の選手より敏捷性が高く、全身持久力や敏捷性が高い選手ほど国内ランキングが上でした(김용연・김상훈、2013年)。

ラケットの反転

フォアとバックのラバーを持ち替えるように、ラケットを回して打つ技術です。1970年代に中国の梁戈亮が反転を使ってカットの変化と攻撃の機会を広げ、今も村松雄斗や橋本帆乃香が、ラケットを反転させ、裏ソフトの面でバックハンド攻撃をしています。

技術ごとのより詳しい解説は、技術のページでまとめています。

カットマンの用具

プレースタイルがこれだけ幅広いので、用具にも決まったルールはありません。代表的な組み合わせは次のとおりです。

組み合わせ特徴主な選手
フォア裏ソフト+バック粒高粒高の変化で相手を崩す、最も多い組み合わせ朱世赫・徐孝元・佐藤瞳
フォア裏ソフト+バック表ソフト表ソフトのナックルカットと攻撃の両立橋本帆乃香・村松雄斗
両面裏ソフト回転量の多いカットと両ハンドの攻撃英田理志

ラケットは、守備範囲を広げるために、ブレードが大きめで弾みを抑えたカット用ラケットがよく使われます。一方で高島規郎は、攻撃力が必要な現代のカット型には、少し小ぶりのラケットと厚めのラバーを勧めています。自分のプレースタイルに合わせて用具を選んでいく、というのがカットマンの用具選びの実情です。選手ごとの使用用具は、用具のページ(ラケット・ラバー・シューズ)でまとめています。

カットマンの対策

ここまでは選手・プレイヤー向けの内容でしたが、「カットマンと対戦することになったが、どう攻略すればいいか分からない」という方も多いと思います。基本となるのは、ミドル(体の正面)を突く攻撃や、フォア・バックへの素早い切り替えで、カットマンの守備のバランスを崩すことです。ただし、対策は相手のタイプ(反撃型か、粘り型か)によっても変わります。詳しい対策は、対策のページでまとめています。

カットマンの試合で適用されやすい「促進ルール」

カットマン同士の試合など、ラリーが長く続く試合のために「促進ルール」があります。1ゲームが10分を超えると促進ルールに切り替わり、レシーバーが13回返球すればレシーバーの得点になります。きっかけは、1936年の世界選手権で1本のラリーが2時間12分続いたことでした。

カットマンについてよくある質問

Q. カットマンは弱い?

カットマンだから弱いとは言えません。攻撃型との対戦成績は互角で、2004年のアテネ五輪では金暻娥が、2016年のリオ五輪ではキム・ソンイが女子シングルスで銅メダルを獲得しています。近年は日本のカットマンが世界ランク上位の中国選手を破る試合も多いです。ただもちろん、カット打ちが得意な選手もいるので、カット一辺倒では勝ちきれないケースもあります。

Q. なぜカットマンは少ないの?

1950〜60年代のスポンジラバーやドライブ技術の進化で攻撃型が主流になったことや、カットマンを教えられる指導者が少ないことが理由に挙げられています。

Q. カットマンに向いている人は?

粘り強さだけでなく、攻撃も守備もしたい、オールラウンドに戦いたい人が向いています。

まとめ

  • カットマンの「守備型・粘り強い」というよくあるイメージは、半分正しいが今の実情とはズレている
  • カットも攻撃も自由自在に操る、プレーの幅の広さこそが本当の定義だとCHOPPERSは考えている
  • 選手は、粘り型・反撃型・オールラウンド型・バックカット+フォア攻撃型の大きく4タイプに分かれる
  • 用具にも決まりはなく、粒高・表ソフト・両面裏ソフトなど、プレースタイルに合わせて選ぶ
  • 技術はカットとツッツキに加え、サービス・レシーブ・3球目と4球目の攻撃・フットワーク・ラケットの反転まで幅広い
  • 攻撃型との対戦成績は互角で、今も世界のトップで活躍している

守るだけでなく、攻めて、変化させて、得点を取りにいく。それが今のカットマンです。

この記事を書いた人

チョッピー(Choppy)
カットマン歴15年以上。中学で卓球を始め、高校でカットマンに転向し、大学で練習を重ね、社会人の今もカットマンを続けています。

カットマンに関する情報は限定的で、指導者や知り合いから教えてもらうことがほとんど。暗黙知になりがちなカットマンの情報を共有知に変え、カットマン界を盛り上げたい。カットマン人口を増やしたい。そんな思いでこのサイトを作りました。

運営者チョッピーのプロフィールとサイトについて

参考・出典

「カットマンのラバー|裏ソフト・表ソフト・粒高の選び方とおすすめ」、「カットマンのラケットの選び方とおすすめ|段階・スタイル別に解説」、「デスカットとは?ジャイロ回転のカットの仕組みと打ち方【卓球】」もあわせてご覧ください。

※この記事の情報は2026年9月30日時点のものです。

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