「デスカット」という言葉を聞いたことはありますか。一般には「ものすごく切れたカット」の意味で使われることが多い言葉ですが、実はもう一つの意味があります。それが、ボールの進行方向に回転軸がある「ジャイロ回転のカット」です。通常のカットとはまったく違う変化で相手を崩せる、カットマンの武器の一つです。この記事では、デスカットの2つの意味、ジャイロ回転のカットの仕組み・打ち方・試合での使い方を解説します。
この記事でわかること
- デスカットの2つの意味
- ジャイロ回転のカットが返しにくい理由
- デスカットの打ち方と、使いやすいボール・使いにくいボール
- 試合での使い方と練習方法
デスカットとは|2つの意味
よく言われる意味|強い下回転のカット
デスカットは、強い下回転がかかったカットの意味で使われることがよくあります。相手がドライブで持ち上げられずにネットにかけてしまうほど切れたカット、というイメージです。
本来の意味|ジャイロ回転のカット
もう一つの意味が、ボールの進行方向に回転軸がある「ジャイロ回転」のカットです。「ジャイロカット」「スクリューカット」とも呼ばれます。通常のカットの変化(強い下回転からナックルまで)とは別の種類の変化を生み出せるのが特徴で、こちらが本来のデスカットです。この記事では、ジャイロ回転のカットとしてのデスカットを解説します。
ジャイロ回転のカットの仕組み
回転軸がボールの進行方向を向いている
通常のカットは縦回転です。回転軸はボールの進行方向に対して横向きで、ボールは進みながら後ろ向きに回転します。これに対してジャイロ回転のカットは、回転軸がボールの進行方向と同じ向きです。ボールは、進行方向を軸にしてらせんを描くように回転しながら飛んでいきます。
ドライブで返すとネットミス、ツッツキで返すと浮くこともある
回転軸が進行方向を向いているので、相手は回転軸の周りを打球することになります。回転軸に近いところを打つと、ラケットの力がボールにうまく伝わりません。そのため、ドライブ(上回転)で返そうとするとネットにかかりやすく、ツッツキ(下回転)で返そうとすると浮いてしまうこともあります。
下回転〜ナックルとは別の種類の変化
通常のカットの変化は、よく切れた下回転から、ほとんど回転のないナックルまでの「回転量」の変化です。ジャイロ回転のカットは、回転の「向き」が違う変化です。相手が下回転の量を読んで打とうとしても、そもそも回転の種類が違うので、読みが合いにくくなります。
強く擦ってもオーバーしにくく、回転量が多くなる
ジャイロ回転のカットは、ボールの進行方向とスイングの方向が違います。そのため、どれだけ強く回転をかけてもボールが前に飛びすぎず、オーバーミスをしにくいのも特徴です。思い切って擦れる分、結果として回転量も多くなります。
デスカットを使う選手
デスカットは、YouTubeなどでエンタメ技術の一つとして取り上げられることが多い技術です。しかし、トップレベルのカットマンが、得点のための実践的な技術として使うこともあるのです。
特に積極的にプレーに取り入れているのが、平屋広大選手と谷岡あゆか選手です。2人とも、デスカットそのもので得点を狙うパターンや、デスカットで甘くなった返球を次の攻撃で決めるパターンを持っています。平屋広大選手は「デスカットマン」の通称でも知られ、YouTubeの動画でも「元祖デスカット」として紹介されています。
平屋広大のデスカット
平屋広大選手のデスカットです。0:45頃から、3本ほど連続でデスカットを入れています。2017年のブンデスリーガ、コウ・レイ(ウクライナ)との試合です。
谷岡あゆかのデスカット
谷岡あゆか選手のデスカットです。1:45頃からのラリーで、最後にデスカットで得点しています。Polish OpenのU-21準決勝、李皓晴(香港)との試合です。
デスカットの打ち方
ボールの真下を横方向に擦る
理論上は、ボールの真下を横方向に擦って回転をかけます。ただ、真下を真横に擦るだけではボールが前に飛びません。実際は、ボールの真下から少しだけ後ろにずらした部分を横に擦り、ボールが少しだけ前に飛ぶようにします。
ボールの底を横方向へ振るスイング
見た目は、通常のカットのように上から下へ振り下ろすのではなく、横方向へ振るスイングです。デスカットを使う選手のプレーを見ると、ボールの底を横方向へスイングするカットが混ざっています。それがデスカットです。
使いやすいボールと使いにくいボール
デスカットはボールの真下を捉える必要があるので、打てるボールが限られます。
| 相手のボール | |
|---|---|
| 使いやすい | 少しミドル寄りのループドライブ、浅いドライブ |
| 使いにくい | 両サイドへの厳しいドライブ、直線的なスピードドライブ |
両サイドに振られたボールや、速くて直線的なドライブに対しては、ボールの真下を捉えるのが難しくなります。回転量が多く、ゆっくり飛んでくるループドライブや浅いドライブが、デスカットを使うチャンスです。
試合でのデスカットの使い方
デスカットそのもので得点する
ジャイロ回転に慣れていない相手は、ドライブでネットにかけたり、ツッツキを浮かせたりします。デスカットは、それ自体で得点できる技術です。
次の攻撃への布石にする
相手がなんとか返してきても、ボールが甘くなることがよくあります。そのボールを次に攻撃して得点する。デスカットは、攻撃のチャンスを作る技術としても使えます。
返ってくるボールにもジャイロ回転が残っている
注意したいのは、デスカットに対する相手の返球にもジャイロ回転が残っていることです。次の1球で自分がミスをしないように気をつけましょう。
- 回転軸を見極めて、どこを打つかを判断する
- 強打して、自分の回転で上書きする
- 粒高などを使っている場合は、もう一度回転を残して返し、相手を崩し続ける
デスカットの練習方法
最初は多球練習で練習するのがおすすめです。相手に少しミドル寄りのループドライブを送ってもらい、ボールの真下の少し後ろを横に擦る感覚をつかみます。ボールの回転軸が進行方向を向き、少しだけ前に飛ぶようになったら、ラリーの中で使う練習に進みましょう。
デスカットについてよくある質問
Q. 粒高や表ソフトでもできる?
ボールの底を横に擦って回転をかける技術なので、回転をかけやすい裏ソフトのほうが扱いやすい技術です。粒高を使っている場合は、デスカットに対するジャイロ回転が残った相手の返球を、また回転を残して返すという使い方ができます。
Q. 初心者でもできる?
まずは通常のカットとツッツキを安定させてから挑戦するのがおすすめです。練習は、多球練習でミドル寄りのループドライブを送ってもらうところから始めましょう。
Q. デスカットを返すには?
回転軸を見極めることが第一です。必ずしも強打で返す必要はありません。回転軸を見極めたうえで、回転をなぞるように打つのが一つの返し方です。ほかにも返し方の考え方はいろいろあります。
まとめ
- デスカットには「強い下回転のカット」と「ジャイロ回転のカット」の2つの意味があり、本来はジャイロ回転のカットを指す
- ジャイロ回転のカットは回転軸が進行方向を向いているので、ドライブで返すとネットミス、ツッツキで返すと浮きやすい
- 打ち方は、ボールの真下の少し後ろを横方向に擦る。強く擦ってもオーバーしにくく、回転量が多くなる
- ミドル寄りのループドライブや浅いドライブに有効で、両サイドの厳しいドライブや直線的なスピードドライブには使いにくい
- デスカットそのもので得点するだけでなく、次の攻撃への布石にもなる。返ってくるボールに残るジャイロ回転には注意する
回転の量ではなく、回転の向きで相手を崩す。デスカットは、カットマンの変化の幅を広げてくれる技術です。
この記事を書いた人
チョッピー(Choppy)
カットマン歴15年以上。中学で卓球を始め、高校でカットマンに転向し、大学で練習を重ね、社会人の今もカットマンを続けています。
カットマンに関する情報は限定的で、指導者や知り合いから教えてもらうことがほとんど。暗黙知になりがちなカットマンの情報を共有知に変え、カットマン界を盛り上げたい。カットマン人口を増やしたい。そんな思いでこのサイトを作りました。
※この記事の情報は2026年9月28日時点のものです。



コメント
コメント一覧 (2件)
[…] 谷岡さんは、試合でデスカットを積極的に使っていたカットマンでもあります。ここでいうデスカットは、ボールの進行方向に回転軸がある「ジャイロ回転」のカットです。ボールの底を横方向へスイングするカットがそれにあたります。相手は回転軸の周りを打たされるため、ドライブで返そうとするとネットにかかりやすく、ツッツキで返そうとすると浮きやすくなります。 […]
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