ナックルは、ほとんど回転のないボールのことです。見た目は普通のボールなのに、回転がないために、相手はラケットの角度を決めにくくなります。カットマンは、よく切れたカットと、ほとんど回転のない「ナックルカット」を同じフォームで打ち分けて、相手のドライブを狂わせます。この記事では、ナックルとは何か、ナックルカットの打ち方と見破られないコツ、そして相手のナックルを返すときのコツを解説します。
この記事でわかること
- ナックルとは何か、なぜ返しにくいのか
- ナックルが使われる場面
- ナックルカットの打ち方と、見破られないコツ
- 相手のナックルの見抜き方と返し方
- ナックルの練習方法
ナックルとは
ナックルは、回転がほとんどない(無回転に近い)ボールです。野球のナックルボールのように、ボールが不規則に揺れるイメージを持たれがちですが、卓球はボールが飛ぶ時間が短いので、大きく揺れることはありません。
なぜナックルは返しにくいのか
- ラケットの角度を決めにくい:人はボールの回転量を見て、ラケットの角度を決めています。強い下回転だと思って打ちにいくと、ナックルが来たとき、持ち上げすぎてオーバーミスになります。
- 自分で回転をかけないと安定しない:相手の回転を利用できないので、ただ当てるだけだと、ボールが不安定に落ちたり浮いたりします。
- 見抜きにくい:上手な選手は、回転のあるボールの中にナックルを混ぜて、見破られないようにします。
強い下回転より、低く深いナックル
カットマンの経験がある指導者のブログは、強い下回転と低いボールは、原則として両立しにくいと書いています。強い回転を求めるほど、ボールが高くなり、浅くなれば、簡単に打ち抜かれてしまうからです。たとえ回転が弱くても、低く深いボールのほうが、相手にとっては返しにくい、という考え方です。
ナックルが使われる場面
ナックルは、カットだけでなく、いろいろな場面で使われます。
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| ナックルカット | カットマンが、切れたカットと同じフォームで、回転の少ないカットを送る |
| ナックルのツッツキ | 台上の短いボールを、回転を抑えて返す |
| ナックルのサービス | 回転がかかっているように見せて、実際は回転がないサービスを出す |
| ナックル性のブロック | 粒高や表ソフトで、相手の強打を、回転を殺して返す |
ナックルカットは、カットマンの変化の中で、よく切れたカットと並ぶ武器です。
ナックルカットの打ち方
ボールを押し出すイメージで打つ
ナックルカットは、上から下に強く振りすぎず、ボールを押し出すようなイメージで打ちます。ボールの下をこするのではなく、ラケットの面でボールを前に運ぶ感覚です。
手首を固定し、肩と肘で打つ
村松雄斗は、ナックルカットは手首を固定し、肩と肘で打つと解説しています。手首を使うと、回転がかかりやすくなるためです。
見破られないためのコツ
フォームを統一する
ナックルカットで最も大切なのは、切れたカットと同じフォームで打つことです。フォームが違えば、相手は回転を見抜いてしまいます。ラケットを被せながら出すときも、フォームは変えずに、当てる角度だけで変化をつけるのが理想です。
フォロースルーを大きめにする
村松雄斗は、ナックルカットを打った後に大きめにフォロースルーすることで、見破られにくくしています。切れたカットのように振り切って見せることで、相手は回転を読みにくくなります。
小さな変化を組み合わせる
村松雄斗は、試合では強い変化よりも、小さな変化の組み合わせで相手を惑わせると話しています。完全なナックルと、よく切れたカットの間にある、少し切れたカットや少し回転の少ないカットを混ぜると、相手はさらに判断に迷います。
試合での使いどころ
攻撃からカットに戻った1本目
「ミスター・カットマン」と呼ばれた高島規郎は、自分が攻撃した後にカットに戻った1本目で、抜群に切るか、切れているように見せてナックルにすることで、相手のミスを誘うことを勧めています(『卓球戦術ノート ラストページ』)。相手は「カットに追い込んだ」と考えて強く打ち込みたくなるので、ナックルが効きます。
ナックルへのストップは攻撃のチャンス
相手がナックルカットを打ちにくいと感じると、ドライブではなくストップで返してくることがあります。高島規郎は、ナックルカットに対して相手がストップしてきたら、それを見逃さずに攻撃するよう勧めています。
表ソフト・粒高でのナックルカット
バックに表ソフトを貼ると、回転がかかりにくい性質を生かして、ナックルカットを出しやすくなります。中国の丁松(Ding Song)は、バックの表ソフトのナックルカットを武器に、「守りと粘り」だったカットマンのイメージを変えました。バックの表ソフトのナックルと、フォアの裏ソフトの切れたカットの差も、相手を惑わせる変化になります。
ナックルの返し方
ここからは、相手のナックルを返すときのコツです。ナックルカットだけでなく、ナックルのサービスやツッツキにも使えます。
ナックルは、相手の打ち方で見抜く
回転をかけるときは、ラケットがボールをこするような動きになります。ナックルのときは、こすらずに、当てるような動きになります。相手のラケットの動きをよく見ると、見抜きやすくなります。ボールが弾んだあとの変化が、回転のあるボールより小さいことも、手がかりになります。
短いナックルは、軽いツッツキで返す
台上の短いナックルは、軽く下回転をかけるツッツキで、低く返すのが基本です。切ろうとして、台上でカットのように大きく振ると、返球が不安定になります。ラケットの角度を少しずつ変えながら、低く返しましょう。
長いナックルは、打点を少し落としてドライブ
深いナックルは、ボールが弾んだあとに少し待って、打点を落としてから、ドライブをかけて返します。後ろから前へ、こするように振ります。下から上に振りすぎると、オーバーミスになります。
どんなボールでも、自分で回転をかけて返す
ナックルは、相手の回転を使えないので、自分でしっかり回転をかけたほうが、安定します。前進回転でも、下回転でも、横回転でも構いません。最初から強く攻めずに、まず安定して返すことを優先しましょう。
ナックルカットを返すとき
カットマンがナックルカットを使ってくると、相手の返球はミスが増えます。低いナックルのカットは、普通のドライブだとネットにかかりやすく、持ち上げようとするとオーバーミスになりやすいからです。切れているか切れていないかを迷うより、カットの回転は、強いか弱いかではなく、変わると考えて、毎回、回転を見る習慣をつけましょう。
高島規郎さんによると、ナックルカットに対して、相手がドライブではなくストップで返してくることがあります。カットマンの側は、それを見逃さずに攻撃につなげます。
ナックルの練習方法
ナックルカットを打つ練習
- 押し出す感覚をつかむ:多球練習でドライブを送ってもらい、ボールを押し出すようにしてナックルで返す
- 切る・切らないの出し分け:同じフォームから、切れたカットとナックルカットを交互に打つ
- 練習相手に聞く:回転がわかったかどうかを練習相手に聞き、見破られないフォームを探す
- 攻撃の後のナックル:攻撃した直後の1本目をナックルカットで返す練習をする
ナックルを返す練習
- 多球練習でナックルを返す:練習相手や球出し機に、ナックルを送ってもらい、前進回転と下回転で返し分ける
- ナックル以外も混ぜてもらう:回転のあるボールとナックルを混ぜてもらい、見抜く練習をする
- 試合形式で、ナックルのサービスを1本は入れる:試合の中で、ナックルを見抜いて返す感覚を養う
まとめ
- ナックルは、回転がほとんどないボール。相手はラケットの角度を決めにくく、自分で回転をかけないと返球が安定しない
- ナックルカットは、よく切れたカットと同じフォームで、ボールを押し出すように打つ。手首を固定し、肩と肘で打つ
- 見破られないコツは、フォームの統一、大きめのフォロースルー、小さな変化の組み合わせ
- 相手のナックルは、打ち方を見て見抜き、短いものは軽いツッツキ、長いものは打点を落としたドライブで返す
- 回転の有無を見分ける習慣が、ナックルへの対応の土台になる
同じフォームから、違う回転を出す。ナックルは、カットマンの変化の要です。ほかの変化はカットの変化のつけ方でまとめています。
この記事を書いた人
チョッピー(Choppy)
カットマン歴15年以上。中学で卓球を始め、高校でカットマンに転向し、大学で練習を重ね、社会人の今もカットマンを続けています。
カットマンに関する情報は限定的で、指導者や知り合いから教えてもらうことがほとんど。暗黙知になりがちなカットマンの情報を共有知に変え、カットマン界を盛り上げたい。カットマン人口を増やしたい。そんな思いでこのサイトを作りました。
参考・出典
- 【技術動画 Vol.8】変化カット編(YouTube「まつしたこうじの今夜もカットマン」)
- VICTAS 日本屈指のカットマン村松雄斗の卓球技術解説
- 卓球トレーニング 卓球のナックルボールの返し方と見抜き方
- umechaの卓球研究室 カットマンへの指導で拘るところは、下回転の強さではない
- VICTAS 卓球用語集 粒高ラバーと戦型
- 高島規郎『卓球戦術ノート ラストページ』
- 卓球王国 元世界3位の丁松が卓球クラブ開設
※この記事の情報は2026年10月6日時点のものです。



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