カットマンの武器は、回転の変化です。同じように見えるカットの中に、よく切れたカットと、ほとんど回転のないナックルカットを混ぜることで、相手のミスを誘います。変化はそれだけではありません。ボールの伸び方、高さ、そして回転の向きでも、相手を崩すことができます。この記事では、切る・切らないの基本から、伸びるカット・止まるカット、横回転を使った変化まで、カットの変化のつけ方を解説します。
この記事でわかること
- 切るカットと切らないカット(ナックル)の打ち方
- 伸びるカット・止まるカットと、高さの変化
- 横回転を使った「回転の向き」の変化
- 変化を見破られないためのコツ
なぜカットに変化が必要か
どれだけ切れたカットでも、同じ回転ばかりでは相手は慣れてしまいます。回転の量や向き、ボールの伸び方を変えることで、相手はドライブの角度を合わせにくくなり、ネットミスやオーバーミスをしたり、甘いボールを返したりします。
大切なのは、大きな変化を1回見せることではありません。村松雄斗は、試合では強い変化よりも、小さな変化の組み合わせで相手を惑わせる、と話しています。
切るカットと切らないカット
切るカットには2つの切り方がある
ボールをよく切るカットには、大きく2つの方法があります。
| 切り方 | 特徴 |
|---|---|
| 上から下に切る | 安定感があり、ミスが出にくい基本のカット |
| 下からすくい上げるように切る | 難しいが、変化をつけやすい |
初心者は、まず「下からすくい上げる」感覚を覚えるのがおすすめです。慣れてきたら、手首を使いすぎず、体全体で横に振り抜く意識を持つと、回転量をコントロールしやすくなります。
ナックルカットは押し出すイメージ
ナックルカットは、回転をほとんどかけないカットです。上から下に強く振りすぎず、ボールを押し出すようなイメージで打ちます。打ち方と見破られないコツは、ナックルカットで詳しくまとめています。
フォームを統一する
変化で最も大切なのは、切るカットと切らないカットのフォームをそろえることです。フォームが違えば、相手は回転を見抜いてしまいます。ラケットを被せながら出すときも、フォームは変えずに、当てる角度だけで変化をつけるのが理想です。
伸びるカット・止まるカット
「ミスター・カットマン」と呼ばれた高島規郎は、回転の量だけでなく、ボールの伸び方も変化になると説いています(『続・卓球戦術ノート』)。
| カット | 打ち方 |
|---|---|
| 伸びるカット | インパクトの瞬間に、後ろ足から前足へ体重を乗せる。振り下ろす軌道は保ち、前に振らないように注意する(前に振ると浮く) |
| 止まるカット | 体重移動をせず、ボールをラケットに吸収させるイメージで、体重を後ろに残す。ボールにブレーキがかかる |
同じように見えるカットでも、相手のコートで伸びてくるボールと、手前で止まるボールでは、相手が打つタイミングが変わります。
高さと距離の変化
高島規郎は、上下(高さ)・前後(伸びる・止まる)・回転の3つを組み合わせて球質を変える「3次元の変化」を勧めています(『続・卓球戦術ノート』)。
- 高さ:打球点の高さ(高い打点、腰の高さ、台の下すれすれ)や、ボールの高さを変える。高いカットは相手の強打を誘い、そのボールを鋭いカットで切り返す、という駆け引きにも使える
- 距離:台の近く、中くらい、遠くと、立つ位置を変える
また高島規郎は、相手のボールが強い上回転か、回転の少ないボールかによって、スイングの軌道を使い分ける必要がある、とも書いています。
どの変化も、一度に全部を身につける必要はありません。得意なものから練習し、試合で試していくのが現実的です。
回転の向きの変化|横回転を使う
縦回転の「切る・切らない」に加えて、回転の向きを変えるのも有効な変化です。
横回転系のカット
高島規郎は、これからのカットには横回転を入れていくべきだとしています(『卓球戦術ノート ラストページ』)。縦回転のカットは、台にバウンドしたときの摩擦で回転量が落ちます。横回転系のカットはバウンドの影響をほとんど受けず、回転量が落ちないので、相手に大きなプレッシャーを与えられます。
ループドライブにはカーブロング
回転量が多いループドライブには、正面から入らず、少し横回転を加えてカーブをかける「カーブロング」で、相手のラケットの角度を狂わせます。詳しくはカットマンのループドライブ対策でまとめています。
村松雄斗も、バックカットを前に押し出さずに横方向に切っており、一緒に出演した張一博は「横回転が混ざってボールがサイドに曲がるので打ちにくい」と評価しています。
ジャイロ回転のカット(デスカット)
回転軸をボールの進行方向に向けた「ジャイロ回転」のカットもあります。ドライブで返すとネットにかかりやすく、ツッツキで返すと浮きやすい、通常のカットとは別の種類の変化です。詳しくはデスカットでまとめています。
1本目のカットに変化を込める
高島規郎は、「初球のカット」に変化と威力を凝縮させることが最も重要だとしています(『続・卓球戦術ノート』)。特に、自分が攻撃した後にカットに戻る場面では、相手は「攻撃をしのいでカットに追い込んだ」と考え、強く打ち込みたくなります。その1本目のカットを抜群に切るか、切れているように見せてナックルにすることで、相手のミスを誘えます(『卓球戦術ノート ラストページ』)。
粒高を使った変化
粒高は、相手のドライブの回転を利用して変化をつけやすいラバーです。相手の回転をしっかり感じ取り、それを利用して切ったり、あえて回転を抑えたりすることで、相手の打ちミスを誘います。
カットの変化の練習方法
- 切る・切らないの出し分け:多球練習で、同じフォームから切るカットとナックルカットを交互に出す。練習相手に回転がわかったかを聞いてみる
- 伸びる・止まるの出し分け:体重を前に乗せるカットと、後ろに残すカットを交互に打つ
- ループドライブへのカーブロング:ループドライブを送ってもらい、頂点付近で横回転を加えて返す
- 攻撃からカットへ:攻撃した直後の1本目のカットに、強い変化を込める練習をする
カットの変化についてよくある質問
Q. ナックルカットがすぐ見破られます
切るカットとフォームが違っている可能性があります。フォームは同じにして、当てる角度と押し出し方だけを変えます。当たった後のフォロースルーを大きめにするのも有効です。
Q. 横回転のカットは初心者でも使える?
まずは縦回転の切る・切らないを安定させてから挑戦するのがおすすめです。ループドライブのような、ゆっくりしたボールから試してみてください。
まとめ
- カットの変化は、大きな変化1つより、小さな変化の組み合わせで相手を惑わせる
- 切るカットは「上から下」と「下からすくい上げる」の2通り。ナックルは押し出すイメージ。フォームは統一する
- 伸びるカットは体重を前に、止まるカットは体重を後ろに残す
- 高さ・距離・回転を組み合わせた「3次元の変化」
- 横回転系のカットやカーブロングで、回転の向きも変えられる
- 攻撃の後の1本目のカットに、変化と威力を込める
同じフォームから、違うボールを出す。それがカットマンの変化の本質です。
この記事を書いた人
チョッピー(Choppy)
カットマン歴15年以上。中学で卓球を始め、高校でカットマンに転向し、大学で練習を重ね、社会人の今もカットマンを続けています。
カットマンに関する情報は限定的で、指導者や知り合いから教えてもらうことがほとんど。暗黙知になりがちなカットマンの情報を共有知に変え、カットマン界を盛り上げたい。カットマン人口を増やしたい。そんな思いでこのサイトを作りました。
参考・出典
- 【技術動画 Vol.8】変化カット編(YouTube「まつしたこうじの今夜もカットマン」)
- 【技術動画 Vol.17】ループドライブの処理方法(同)
- 【技術動画 Vol.9】粒高でのカット&ツッツキ(同)
- 高島規郎『続・卓球戦術ノート』(卓球王国)
- 高島規郎『卓球戦術ノート ラストページ』
- VICTAS 日本屈指のカットマン村松雄斗の卓球技術解説
- 村松雄斗「バックカットのコツ」(YouTube「村松雄斗 -Yuto Muramatsu-」)
※この記事の情報は2026年9月28日時点のものです。



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